胸ポケットの葉巻を差し出す神父

その昔カトリック校で過ごしていた時期がありますが、その敷地内には立派な教会があり、多くの神父さんがそこで生活していました。むしろ教会に付随する形で校舎があったといっても過言ではない位、立派な教会でした。日曜日になると近隣の街から多くの人がお祈りにやって来ます。

在学中は日曜日に1日3回ほどあるミサのどれかに出席しなければなりません。サボるとワークアワーと言って1時間ペナルティを課せられ、草むしりなどさせられます。

前振りが長くなりましたが、その神父さんの中に「ディンハオ」というあだ名のファーザー(ブラザー○○ ファーザー○○などと呼びます)によく可愛がられていました。四季毎に活動するスポーツが違いますので、夏はアメフトやサッカー、冬はバスケなどとなりますが、冬季のスポーツには射撃があり、私も冬季は2度ほど在籍していました。そのファーザーはそこの顧問でもあります。

神父さんの一般的なイメージとしては物静かな紳士風でしょうが、ディンハオはお祈りする際の正装以外は派手なネルシャツにがっちり系のウェスタンブーツで闊歩しています。顔もごつい系で神父さんというよりは怖い系の人といった方がしっくりきます。先の戦争では日本と戦ったぞと慈愛と親しみを込めた笑顔で私の肩を叩きながらよく話をしてくれました。

敷地内は広く移動が大変なので、そんなディンハオの真っ赤なピックアップのボンネットの角、ヘッドライトの辺りに腰掛け(既に中が満員な為)射撃場に向かう際、胸ポケットにある葉巻を咥えて運転しますが、時たま一本を吸うか?といった目で渡されます。

今思えばそんな葉巻を頂くとんだ若造でしたが、うんちくを唱えずただスカッと吸う葉巻というものを教わったのがこの頃だったのかもしれません。きっとお手軽なものだったのでしょうが、銘柄を聞いておけばよかったと思い返します。

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