アロハタワー

数年前、私はハワイに住んでいました。
ハワイという所は観光で訪れるには良いところですが、実際に生活するとなると、高い物価と渋滞、それに狭い住居のせいであまり薦められたところではありません。

私が住んでいたコンドミニアムは、アロハタワーから歩いて5分もかからないところにありました。
そこでの日課といえば、夕方日が落ちる頃アロハタワーの岸壁で葉巻に火をつけることでした。

アロハタワーの岸壁からは、毎週ハワイ諸島観光の大型クルーズ船が出向します。
私がハワイに住んでいた頃は、大型クルーズ船は確か三艘あり、それぞれ名前がつけられていました。
二艘はハワイに関係する名前で、残りの一艘はPride of Americaという名前でした。

船が桟橋を離れる前に、バンドと踊り子が桟橋からアロハオエを歌い、それを出航す船の乗客たちがデッキから見下ろしている様子を見ながら葉巻を燻らしたものです。
この様子を毎週見ていたのですが、あることに気が付きました。
このバンドと踊り子は、ハワイに由来のある名前の船が出る時はいつも桟橋でアロハオエを歌いフラダンスを踊るのですが、Pride of Americaが出航する日には桟橋に来ないのです。

その理由は多分、いまだにハワイ人の中に残る、アメリカによるハワイ朝廷への侵略に対する不満から来るものだと思います。
Pride of America という名の船に対して、アロハオエで出航を見送ることはハワイ人のプライドが許せないのでしょう。
実際、今のハワイでもっとも貧しいのはハワイ人で、土地のほとんどを本土から来た白人(最近では日本人を含むアジア人)に抑えられているのが現実です。

そんなことを考えながら桟橋を離れていく船を見つめながら葉巻を燻らしていました。

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